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概要

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45 星になったタカコは、中等学校の一・二年生の八千名と言われ、四月に入学したタカコたち市女の一年生も、当然その中に入っていた。 広島で何が起こったのだろう、空襲警報は解除になり、続いて警戒警報も解かれて、みんなほっとして作業にかかろうとしていた。 先生の作業についての注意が終わるとタカコは手洗いに走った。手洗いは誓願寺本堂の西側にある。その時だった。太い光の束が学徒たちの上に注がれた。あっと声を上げる暇もなく、大きな風で全員大地にたたきつけられ、辺りも人間もすぐに燃え始めた。炎に追われて、歩ける女学生たちは川へ逃れた。川は海の匂いがした。満潮に近い川は、海からの潮を運んできていた。 タカコたち一年一組の七?八人は、手を取り合って輪になり、川に浸かった。先生も一緒だった。みんな顔をひどく焼かれていて、お河童の髪はじりじりに焼け、逆立っている。皮膚は時間が経つにつれて膨らんでくる人や、破れて垂れ下がっている人と、それぞれのいた場所によって違っている。 タカコは自分もそうなのかと手で触ってみたが、身体も髪もみんなのようには焼けていない。警戒警報は解除になってはいたが、これは爆弾だとタカコは思った。 静かな、物音一つしない朝が明けた。 昨日一日中広島を焼いた煙が、薄暗い川面をゆったりと渡っていく。川は満潮に近いのか、一旦海に向かって流された数知れない遺体の群れは、流れに乗って再び帰ってくる。 それらはこれ以上膨れることのできないものや、赤黒く崩れかかった皮膚を水に濡らしながら、広島の街から離れなれないまま、流れに乗ってまた戻ってくる。もう人間では無くなっているその太鼓腹を天に向けて。 タカコはもう死体の酷さには驚かなくなっていた。川の中に浮かぶ死体は、生きていた一人ひとりの歴史をそこで断ち切られたまま、一個の物体となって流されていく。 タカコの廻りには桜の花びらを散らしたように、女学生が赤肌をさらして転がっていた。みんな生まれた