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概要

gakuto

272(動員学徒、女子挺身隊、電話局員)が、折り重なって倒れており、〝降りる事が出来ない!どうしよう!?足元がすくみました。そして躍り場から外を見て仰天、まだ午前中の筈なのに外は闇夜に変り日本銀行、中国電力、市役所、保険会社等大小のビルというビルの窓から火が燃えさかり、その火で街は明るくなって、大きな樟の樹は真黒焦げに、あちこちの電柱は倒れ電線が横たわり、建物疎開で積んであった木材も燃えており、ひろしまの街は火の街になっておりました。 左眼をえぐり取られ、顔面を大きく切り裂かれ、お化けのような姿になっているとは知らず、早く逃げなければと二階の窓から飛び降りました。四方を見渡すと、西も、南も、北もみな火の海となって燃えさかり、東の比治山の方が余り燃えていなかったので、比治山へ向って、誰にも会うこともなく一人火の街を逃げ、今来た道を振り返って見ると、もう端から端までが火の海となり、どんどん追っかけて来る火の勢いにもう恐ろしく、恐ろしくて二度と振り返って見ることは出来ませんでした。 京橋川川岸に辿りついて見ると、逆立った髪、焼けた皮膚をぶら下げた多くの人が向岸の人達に大声を上げておりました。よく見ると鶴見橋が燃えて、京橋川は満潮になっており、泳げない多くの人が助けを求めておりました。やっとの思いで川岸まで逃げて来た私ですが、何かはっきり物が見えない。不安になっておりました。そこへ電話局の人が助けに来て下さり、当時は貴重品だった煙草を持っておられ、その煙草を血止めに顔面の傷につけて貰った時、担任の脇田先生が助けに来て下さいました。 「もう橋を渡って逃げることが出来ない。泳いでしか逃げられないけど、泳げる?」「泳げます」「では先生が手を持って上げるから」と……泳いで行く中に目が見えなくなり、気の遠くなって行く私を「もう少しよ!頑張って!」と、必死になって励まし励まして戴き、向う岸比治山の方へ連れて逃げて戴くことが出来ました。多くの学徒が川で生命を落としたのに、先生のお陰で私は助かりました。負傷をした生徒を火の街