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概要

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268なりました。誰をうらんで、どこへ訴えていいのか…。もう私の心がすさんで、どうしようもない気持ちになり、死を考えるようになっていたのです。 それを救ってくれたのは父の何気ない言葉でした。私が外出から帰ってた時、被爆当時のことを、近所の人に話しているのを、物陰で聞いたのです。「体中をズルズルに焼かれ、動かすことも出来ないので、今度空襲を受けたら、もう逃げないで、精子を抱いて一緒に死のうと思っていた。」と言っているのです。私は胸が一杯であふれる涙をどうすることも出来ませんでした。 私はそれ以後、「やっぱり頑張って生きていかなければいけない!」と思うようになりました。そして、その父の言葉をつらいことがある度に、幾度も、幾度も思い出し生きて来ました。 母は私が娘になるにしたがって、「なんとか美しくなるものなら。」「元に戻るものなら」と整形手術を何度も受けさせてくれました。少しずつよくなりましたが、それでも元の顔には戻らないのです。 あの日、あの時、逃げるすべもなく襲いかかる火煙にむせびながら、ヂリヂリと焦がす炎に責められて、あるいは重傷の身を水中に逃れ力つきて、この世を去っていった人びとの苦しみにくらべれば、私の苦痛等は物の数ではないと思います。今でも私が一番胸をしめつけられるのはあの道端や川岸で、男女の見分けもつかない程変わり果てた姿で、手をさしのべ、断末魔の声を絞って助けを求めた人びとの中に、私の親しい友達がいたのではないか、と思う時です。戦争のない平和な地球を守ることが生かされた私達の義務であり、責任であると信じています。戦争は絶対にあってはいけません。昭和7年8月15日生女学校一年生の時被爆