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概要

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263 いちぢくがあったための意慾を燃やして生命を継いで来た。 然し時にはあの時煙となっていたらこんな苦労もあるまいにと愚痴を口にしたことも一回ではなかった。人生は上を見ても下を見ても際限がない。 長男が学徒で青春の夢を果せず、国家のため犠牲となったことを思うと又しても弛み勝ちな心を引き緊めるのである。 物価は高いし、人情は紙の如く薄く、生活環境は年々悪化している今日ではあるが同憂の会員遺族と和をもってお互い扶けあい、長くもない餘生を楽しく過し慰霊の誠を捧げたいものである。父(故)大東和徳雄(元副理事長)母   大東和清子 明40・8・10生長男  大東和政彦 昭7・11・6生広島市立造船工業学校一年生被爆場所 水主町いちぢくがあった井上ヨシエ 今年は原爆被爆五十周年を迎えました。ですから、二男功が亡くなって丁度五十年たったと云うことです。けれども功が六十二才になっている姿はどうしても想像出来ません。何時までたっても思い出す姿は十二才のままの姿なのです。 原爆投下の二、三日前、「今日はいい事があった、いい事があった」と大喜びしているので、「何があったの」というと、「いちじくがあった」と云う。夏のいちぢくは、一寸甘くてすっぱいのです。又、原爆前夜久し振りにたいたご飯を食べながら「ご飯はやっぱりうまいな」と云いました。あの食糧不足の時、いちぢくやご飯に大喜びしていた功ちゃんが、可愛想でなりません。六日朝出かける時、「七日と十三日がお休み