ブックタイトルgakuto

ページ
272/326

このページは gakuto の電子ブックに掲載されている272ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

gakuto

258邦男ちゃんのこと今田 コト○昭和二十年八月六日 朝、警戒警報に入りましたが、七時頃解除になりました。長男の邦男が「行って来ます。」と勤労奉仕に出かけましたが、「汗拭きの手拭いを忘れた。」と言いながら取りに帰り、風呂場に干してあった手拭いを持って、再び出て行きました。一才三カ月の娘を背負い、四才の次男の手をひき、外に出て空を見ると、今迄に見た事もないような、澄みきった青空でした。その瞬間、目の眩むような光と「ドーン」と云う音は、何にも譬えようがありません。「あぶない!」と思い、すぐ防空壕に入りました。 しばらくして大芝土手に行き、市内の方を見ると、己斐から広島駅の方にかけて、一面火の海でした。その時、「邦男はどうなっているだろうか」と大変心配になりましたが、直ぐに探しに行くことが出来ませんでした。そうこうする内に、橫川方面から帰られた人は、みんな裸足、はだか同然、体の皮膚は垂れ下っておりました。「古市、可部の方へ帰る」と云いながら、倒れて亡くなってしまわれました。 又、こう云う人もおられました。方向を間違えられたのか、「宇品へ帰りたい。」と云う女性に、「渡し舟で牛田へ行き、饒津神社の向うに見える広島駅あたりで、もう一度お尋ねなさい。」と教え、私のカンタン服を脱いで「この服を着て行きなさい。」と云うと、その方は「私のはあります」と云い自分の体を見て素裸に驚かれ、「こんな体になっているのですか」と云いショックを受けられたのか、その場に倒れそのまま息を引きとってしまわれました。我が家に帰りたい一念で、ここまで歩いて来られたのでしょう。 主人が「皆んな元気か、邦男はまだ帰っていないのか。私はやられた、痛い! 痛い!」と、頭から足まで、体の後側全体に大火傷を負って、帰って来まし