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概要

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13 被爆して、生きて瓦が雨のように落ちてきました。メリメリと音を聞いたのですが、その後は気絶したようです。気がついた時は真っ暗の中でした。建物の下敷きになったのです。頬をつねってみました。 ―イタイ! 1+1=2 a+b……、声を出していってみました。 生きている! と思いました。 でも、足が梁か何かに挟まれていて動けません。助けを呼んだのでしょう。外でがやがやと声がして、数人で引っ張り出してくれました。ほっとしたのも束の間、顔と手がヒリヒリして、見る間に水ぶくれになりました。左足の運動靴は破れて、血で真っ赤になっています。体全体が、もう痛くて。 服装は国民学校のときの冬服で、戦闘帽子を被り、布の運動靴、ゲートルを巻いていました。いまでもそのゲートルは持っています。そして、肩からかけるカバン、綿入りの防空頭巾です。 服は表面を撫ぜたように焼け、そして、名札の墨で書いた文字だけが焼けていました。 こんな具合の焼け方ですから、名字も名前も、その当時、間違いがかなりあったのも頷けます。 私の名前は宇品の収容所で記録されていて、『西岡誠吾』が正しいのですが、『西岡省吾』、『誠』が『省』になっていました。このことが『西岡誠吾』、私は死亡したということになったようです。 学校のすぐ側に爆弾が落とされたと思いましたね。自力で川土手に出ました。市内の上空は黒煙と炎です。校門から南へ下がった所にある、赤レンガ造りの変電所は火を吹いています。周囲は怪我人でいっぱいです。顔を血で真っ赤にした女の人が、「殺してくれ!」 と叫びながら、坂道を転がって行きました。何ごとが起きたのか、さっぱり分かりません。 そのうち上級生二、三人が、学校の門から出てきました。その人について行こうとしましたら、「お前はひとりで行け」 といわれたので、近くの人達といっしょに、土手の道を歩いて御幸橋へ行きました。土手の道を歩いてい