ブックタイトルgakuto

ページ
253/326

このページは gakuto の電子ブックに掲載されている253ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

gakuto

239 母の愛に守られてなりました。驚いて耳と目を覆い地に伏せました。少したって顔を上げて見ると真っ暗です。校舎に下敷になったのかと思い体を動かしましたら体を動きました。下敷になっていないなと思ったら気が遠くなり、どれくらいの時間がたったかわかりませんが人の泣き叫ぶ声で気がつきました。明るくなっており立ち上って見て、自分の眼を疑いました。先程まで見慣れた町の様子が一変しているではありませんか。 家と云ふ家はみな押しつぶされたように壊れ、人と云ふ人は皆血まみれになり、着ているものは焼けてボロボロ、裸同然の人、頭を傷され血だるまになった人が「医者は、医者はどこだ」と呼びながら走っている。つぶれた家の中からはい出して来る人、全身にガラスが立ち血を流しながら、痛いよ痛いよと歩いている人、子供を助けようと必死で名前を呼ぶ母親、地獄さながらの様子に私はあ然としました。 背中がヒリヒリするので我に返った私はあたりを見ましたが一緒にいたクラスメートは誰一人おりませんでした。砂地のような所に一人立っていました。校庭にいたので爆風で飛ばされたようです。 着ていた服やモンペは焼けてボロボロ、肩から掛けていた防空ズキンもお弁当の入っていた袋も陰も形もなく、はいていた下駄も飛んではだしです。「山へ逃げろ」と叫んでいる人がいて皆熱いアスファルトの道をゾロゾロと山の方へ逃げました。比治山橋の所にはもう沢山の人が集っていました。虫の息で水を求める人に水をあげる人もなく、どの人も裸同然で帽子の下から首にかけて皮がずるりとむけたれ下り、半袖の人は袖の下から指先の方へ腕の皮がむけて若布を水にもどした様な真黒な皮膚がぶら下っていました。警防団の方がメガホンで今ここに救援隊が来て皆んなを安全な所へ運ぶからここから動かないようにと叫んでおられました。あまりの暑さに私は川の中を見ました。沢山の人が川の中に入っていました。私も川の中に入りました。水はお風呂に入った時の様に気持がよく大勢の人が川の中に入って来ました。だんだん深い方へ押され水が首の方まで来て私も流されそうになり、急いで岸へ上ろうと思いました。深い方へ押された人は向