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概要

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233 追憶の記ましたが、咽喉が乾いてたまらないので両手で受け一口くらい溜まったので、それを飲みました。川に水が有っても死人で埋まり、それに人が、があがあ吐きますので飲まれません。 その内私は沢山の血を吐きました。それきり気を失い、夕方寒いので目が覚めて隣の友達を見れば虫の息でした。この人も、もうだめだと思い、こそこそ這いながら逃げようとしましたら、兵隊さんが来て「ここに生きた子がいるぞ」と言って舟に乗せられ、又そのまま気を失いました。二日後に気が付いた時兵隊さんが「気が付いたか」と言って親切にして下さったそうです。 その時幸恵の傷はほとんど無く、頬と右手を焼き、それに大手の下から出るのに足の膝が両方共くるりと皮が取れて赤身が出ておった程度でした。すぐ連れて帰ればよかったのですが、軍医さんが、「このくらいの傷は二、三日で綺麗に治してあげます(軍隊の高貴薬で)」と言われ、本人も治って帰ると申しますので、そのままおりました。 翌日から熱が出て、下り出しました。十一日に敵機が似島の上空を十四機旋回しました。そのため引き上げねばいけないと軍の命令で、舟で廿日市の小学校へ連れて行かれました。八幡の小学校でその夜は夜通し南無阿弥陀仏々々と大きな声で念仏を唱えますので、「幸恵ちゃん、ここは病人ばかりだから小さい声で唱えなさい」と言いますと、「はい」と言って又段々に大きな声で夜通し南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と言っておりましたが、十三日朝静かに君が代を唱い出しました。そして、天皇陛下万歳万歳と両手を上にあげますので、私が見ておりますと幸恵は、「広島第一高女一年生第五組の橋本先生にお世話になりました。お友達の皆さん永らくお世話になりました。私はお先に行きます。さようなら、さようなら。国民学校の校長先生、尾本先生、お友達の皆さん永らくお世話になりました。私はお先に行きます。さようなら、さようなら。親類の叔父ちゃん、叔母ちゃん永らくお世話になりました。私はお先に行きます。さようなら、さようなら。お父ちゃん、お母ちゃん、お姉ちゃん永らくお