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概要

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214元安川原の惨山崎太郎 想うだに、身の毛もよだつ。あの日、あの時。 思えば、遠い昔の出来事のような感じもするし、また、昨日の出来事のような気もする。 口では充分言えぬ、無論書き尽くす言も出来ぬ。 然し瞑目すれば、今でもあの惨状が、忽ち瞼を突き刺すように、ありありと思い浮かべる。 私が元安川畔市女生徒遭難現場に辿りついたのは、あの日の昼すぎであった。 あの朝私は、小町中国配電会社で被爆を受け、頭に負傷して脱出。電車道を南へ走り、市庁舎を経て、文理大の広場まで逃れて、正午頃まで憩んでおった。 あちらからも、こちらからも、傷ついた人、血みどろとなって瀕死の人を背に、肩に、次々と逃れ来る人々。思えば阿鼻叫喚の地獄の様相とは正に、この時と思われる。昼前となって、火勢がやや衰えて来た。私は子供が気にかかり、友達と別れて、再び引き返した。 私の家は当時中島の天神町にあった。当時市女の二年生であった仁子がその朝、学徒動員で水主町へ県庁?新橋間の疎開跡の整理に出ていたので、その安否を気づかい、その方へ足を向けた。 元安川に架けられていた仮新橋は、その時既に半分落ちていた。丁度腰の辺まで水があったが、歩いて渡った。ああ、何たる悲惨。河原一面砂洲よりに無惨にも、何十何百の少女等が。或いは傷つき、或いは眠り、実は既に事切れしか。又は斃れ、あちこちに、僅かに蠢動し、かすかにウメキ声が聞こえる。 驚くことには、どれもこれも、素っ裸である。 シュミーズもスカートも焼け、身体は茹蛸のように赫黒色になっている。 丁度海水浴場の干潟で裸ん坊の子供等が或いは横たわりねころび、たわむれているのを想像して見る。 さながら焦熱地獄を目前に見る。