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概要

gakuto

202でしょう。私は学校の門前の穐本の下宿まで帰らねばと思い、一大決心をして再度江波山文まで出る。陸軍の船がいて吉島まで渡してくれるのですが、あまりの人山に私は待ちきれず、ごぶったり、泳いだりして刑務所の下までたどり着いた。シャツの中へ本を入れ、頭から首へゲートルでくくりつけて川を渡る。私は足をすくわれる様な水底を歩きながら多くの犠牲者を手でかきわけながら渡った。この思いでは終生忘れないでしょう。 無事、修道中学校まで着いたが、校舎は押しつぶされ、私の下宿先の穐本家もガタガタで全滅に近かった。おばちゃんは負傷していたが無事生きていた。一寸耳の遠かったおばちゃんは、「浜さんよう生きて帰った」と、それは喜んでくれた。物理の中越先生も生きていた。手を握りしめて喜んだ。 戦後三十二年、我々学徒動員と共に働いた朝鮮の若い仲間は元気でいるだろうか、もし元気で生きているものなら、当時を偲んで語り合って見たい。韓国人慰霊碑の前を通る度に思い出されて、頭を下げる今日この頃です。   ボロボロの原爆の日を思い出す、     事ある度に我は思いぬ(この手記は、父親をはじめ原爆の犠牲となった多くの人々の御霊を慰め、平和への願いを込めて「私の体験記録 昭和二〇年前後」と題して昭和五十二年六月に、まとめられたものの一部である)(当時中学四年 江波三菱造船所で被爆)