ブックタイトルgakuto

ページ
215/326

このページは gakuto の電子ブックに掲載されている215ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

gakuto

201 浜さん、よう生きて帰ったを済ませ、穐本のおばさんの心尽くしの温かい雑炊を食べ、足にゲートルを巻き感謝の気持ちで工場へと急ぐ。途中、空襲警報のサイレンを聞きながら南大橋を経て、吉島刑務所あたりで空襲警報が解除になる。やれやれの思いで時間内に職場に着く。私は〝補工?という班にいました。酸素壜を同僚とかついで現場へ行く途中、又サイレンが鳴った。「今朝から二回じゃ、又来やがった」と思い空を見上げる。たった一機の飛行機が太陽のふちどりの輪の中に入ってきた。その時です。何か太陽に反射してごみの様なものが落ちているように感じたが、飛行機は何くわぬ顔で飛んで行ってしまった。その瞬間の事である。〝ピカピカ?〝キラキラ?っときた。また高圧線のショートかと思った。ところが違っている。まわりが生あたたかく、広範囲に稲妻が走った。背中が熱くなるのを覚える。眼の前がクラクラっとなり気が付いたら放心して座っていた。地球も割れよとばかりの大轟音、生まれてこのかたこんな大音響を聞いたことがない。私の同僚も徴用工の朝鮮の若者もうろたえ、恐れおののく。誰云うとなく、学校は、家は、家族の安否は、皆一同におびえた。 私は伝令として様子を見に無我夢中で走った。そこで見た物は倒壊した家、数知れぬけが人、死人、もくもくと天まで聳え立つ黒雲、地獄の川と化した水面には〝パチパチ?〝ジュウジュウ?焼け焦げる人間に混じって牛馬や、犬、猫等色々な物が流れている。生地獄とはこの事です。一目散に工場まで引き返しました。工場内は大騒ぎになっていた。広島はどうなるんだ、日本はどうなっているんだ。我々の将来はどうなるんだ。わけもわからず腹立たしさで一杯でした。 又、忘れられぬ事の中に我々動員学徒と共に徴用されて、朝鮮から多くの若者達が来ていた。彼等は覚えたての日本語で「ドシタカ、ドシタカ」と云いながら恐怖に脅えきった顔でおどおど心配そうに苦痛の色を濃くしていた。遠く故郷を離れ、日本の戦争のために駆り出され、我々と一緒に頑張っていた人達はどうしているでしょう。 ともかく工場を退去したのはその日の四時頃だった