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概要

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6をしよったものか、どうなったのか、全然分らない」との返事でした。 それでは、しかたがない、と思いまして、水主町の県庁跡に行ってみました。一番に感じたことは、(これでは、生きてはおらん!) という思いでした。火は燃えてはおりませんが、煙はところどころ、上がっていました。生徒さんもたくさんいました。防火水槽に頭をつっこんだり、道路に座って水を求めたり、マンホールの中で死んでいたり、着物が焼けて裸になったり、家の下敷きとなって、助けを求めている者や、焼けて顔が変わってしまい、だれか分からなくなっている者。 死んでいる人が、そのまま、立っておられたのが、今でも、私の頭の中にあります。また、材木のイカダが沢山ある川がありました。そこには、また、沢山の生徒さんたちが、イカダの上や下にたくさんいて、潮の満干で上げられたり、下げられたり移動していました。水を求めて、川に走ったのだろうと思います。こんな所に、私の息子もいるのではないかと思いましたが、これが、私の息子と断定できるものが見付からないので、その日は、そのまま帰りましたが、こんな状況では、とても生きているとは思えませんでした。これがこの世の地獄と思いました。 こんな状況の中、それでも、わが子は生きているのだ、と思い込んでいました。何処かに避難しているのではないか、また、どこかへ収容されているのではあるまいかと、その思いを頼りに毎日暑い日でしたが、人の噂では、県工の生徒は似の島の方に収容されているとの話で、舟主の人に頼んで、似の島に渡り学校やら、そのほかの収容所を探して歩きました。沢山の負傷者や、息の切れた人や、救いを求める人でごった返し、涙なくしては、見られません。 それでも、今日も、今日もと毎日人の噂を頼りに、市内の収容所を探し歩きましたが、見付かりませんでした。 そのうち、四日目からは、空き地では材木を積んだり、油をかけたりして、死体は焼かれ出しました。見ていて可哀相で。……いまだに忘れられません。一週