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概要

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175 被爆弁当で紫斑?では、すでに方々から火の手が上がっている。その場にいた誰もが、「ああ、広島駅に大きな爆弾が落ちたんだ」と喚く。引率教官関本雪象先生の指示で、ひとまず全員解散して、各自家に帰ることになる。数人の友達と連れだち、広島駅の東側、荒神市場の横を通り抜けようとして、前述の情景に出合った。恐らく、その子供は、梁に挟まれた手首の部分を切り落とさなければ、すぐ間近に迫り来る業火のために、万が一にも助かる可能性は残されていなかった。 当時、木製であった柳橋の欄干は、その真ん中辺りから炎が噴き出している。比治山下の電車通りを、途中から偶然一緒になった担任の関本先生と南下、沛然と降ってきた黒い雨を防空壕で避け、やっとの思いで自宅に帰った。帰宅してはじめて、顔や左腕上膊部に火傷していることに気付いた。 関本先生は、昭和三十年秋、原爆症で亡くなられたと聞いた。被爆弁当で紫斑?武田  寛 あの日は体調が悪く、連日の作業疲れもあって休もうかと思ったが、気を引き締めて東練兵場に行った。整列した直後、飛来したB29から落下傘らしいものが投下されたと思った瞬間、強烈な光と耳をつんざく轟音、黄色を帯びた熱風に吹き飛ばされた。夢中で皆の逃げる方に走って、気がつくと広島駅近くの線路内に逃げ込んでいた。誰かが、「また爆撃されるから、山に逃げろ」と言うので、慌てて方向を変えて逃げる途中、整列地点に戻って持ち物を捜した。飛ばされた戦闘帽と上着(腕に掛けていた)は、既にぶすぶすとくすぼっていたので諦め、弁当を捜したところ風呂敷から煙が出ていたのでもみ消して、後生大事にかかえて一目散に山の方へ逃げた。二葉山の中腹から市内を見