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概要

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142ごい爆風で、砂は顔を叩きつけ、棒立ちになったまま、しばらくはどうすることも出来ない。やっと気をとり直し、向きを変えたが、やはり動くことも出来ず、そのまましゃがみ込んでしまった。 どれくらいの間があったか「お姉さん、早くこっちに来なさい」と呼ばれるので、積み重なったものをふみ越え、裏の縁側までどうにか出たところで、爆風は止んだ。ようやく我にかえってみると、なんと、家中、足のふみ場もないほどに、どこから手をつけようかと思案するくらい、満足なものは何一つもない。 家には、母(一策には祖母に当たる)と、出張で出て来た私の弟と、私と三人だけ。「今のは至近弾に違いないが、怪我がなくてよかった」などと話しながら、ぼつぼつ片付けているところへ、工場の者が一人来て、「このままで帰ればお袋が心配するから、血を洗い落としたい」というので、私はその方の手当てを手伝っていた。 すると、「お母ちゃん」と一策の声がした。つづいて母が、「まあ、一ちゃん。どうしたことだろう。早う出て見てやんなさい」というので飛んで出た。玄関に立っている一策の姿、両手を上げて、顔は灰色にはれて丸くなり、パンツ一枚で、シャツも長ズボンも地下足袋もどこへやら、はだしでぶるぶるふるえている。 「そばへ寄ってさわってはいけない、痛いから」というし、どうしてやっていいか分からない。 「早く寝たい」というので、とっさに、応接の机に拾い上げてあったものを払い落とし、それを二つ並べ、さて布団を引き出して敷いてやると、自分で歩いてその上に寝たが、可哀相に手をかしてやることも出来ない。掌の皮はむけてぶら下がり、砂がくい込んでいる。頭は帽子のあとを残して焼け、髪は一本立ちになって砂でざらざらしている、目も口もはれ、つぶれている。今までの面影は見ることも出来ない。 「お母ちゃんの顔が見えない」「そっと目を開けてごらん、見えるよ」と顔を近づけると、「見えた」とは云ったけれど、今にして思えば、もうその時は見えなかったのではないかと悲しくなる。「お祖父ちゃん、