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概要

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141 お母ちゃん、顔が見えない過程なのです」。 広島の平和公園に、「安らかに眠って下さい 過ちは繰り返しませぬから」と書かれた慰霊碑がある。何の過ちで誰の過ちかは、あえて記されていない。アメリカを非難の矛先にしたいと思う人もいるだろうが、私は、広島の市民の皆さんがこの問題をより崇高で、哲学的な水準でとらえ、すべての人が求めるものは、暴力や戦争の恐怖から開放される文化的な変革としていることにとても満足している。 「過去を覚えるものは未来のために働くものである。広島を覚えるものは平和のために働くものである」。これは、今年召天されたローマ法王パウロⅡ世が、広島を訪れたときに残された言葉だ。……七十三歳(旧姓中村)高女五十六回・大英二回、カナダ・オンタリオ州在住お母ちゃん、顔が見えない渡辺 重子   吾子の歳九年かさねて原爆忌   炎天や吾子のかたりし道を行く   墓碑に水さらさら流しぬかずきぬ 原爆忌を迎えるたび、いまさらのように胸はうずき、何時ともなく、じっと追憶にふけることが多く、ふと我にかえって慌てて仕事の手を動かすしまつ。あれから九年を過ごしては来たけれど、数々の思い出を胸にして、どうにも広島をはなれる気もなく、ひたすらに御霊にぬかずくのみ あの日、皆の出かけた後、私は台所にいた。その時お隣の庭木に、マグネシュームの光のかたまりのようなものが、スーと落ちたので、アッとその方を向いた。これは格別燃えもしなかったが、とたんにものす