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概要

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131 廊下の曲がり角まで行った時へ持って行って洗ったとのことでしたが、それからは出血することはありませんでした。体が弱っているせいか傷跡はなかなか治らず、縫合してくださった先生の所へ十一月初旬頃まで通院しました。ちょうどその頃、学校のことを聞くことができました。授業が再開され、終戦になって間もなく少数ながら集って授業を受けていた人もあったとのことでした。 終戦。それも負け戦さでしたが、悔しさよりも、これでもう逃げ回ることなく自由に行動できることの喜びの方が、大きかったのです。顔の傷跡は月日の経過と共に目立たなくなり、今ではほとんど分からなくなっていますが、ここに至るまでの体調と、結婚して長男を出産してからは、被爆者であるがために悩みました。因果関係が分からないながら、切り離して考えることもできず過ごしました。第二子の長女においても、中学生の時、甲状腺に異状があった時とか、結婚相手の親御様に、母親の私が被爆者であることで反対された時も、私自身、結婚して子供を産んだことを後悔しました。 八月六日、地球上で初めての核爆弾によって殺された大勢の人々のことを思い、戦争はしないと誓ったことを忘れてはなりません。 いくら書いても思い出すことはいくらでもあります。今までは、なるべく被爆者であることは、話さない方がいいと思っていましたが、これから生きて行く人たちのために、話さなくてはならない大切な一日一日であると感じています。……七十七歳秋山 信子(旧姓秦野)専保二回、東京都三鷹市在住