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概要

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127 廊下の曲がり角まで行った時廊下の曲がり角まで行った時秋山 信子 私は、広島女学院専門学校で被爆しました。四月の入学後も戦局はますます厳しくなり、学生も授業どころではなく、学徒動員で男子は戦場へ、女子は軍需工場で働きました。中学生も家屋引き倒しにかかわる作業の労働力となって働いていました。 八月に入って一週間授業を受けられるとのことで、私たちは喜び合っていました。八日は女学院の動員先である東洋工業(現マツダ)の入所式と決まっていました。ほんとうにわずかな間でしたが、先生の講義をノートしたり、早くも仲良しの友達ができ、席を並べたクラスメートとの会話も弾み、ふと、戦争の最中であることを忘れたような幸せなひと時でした。 六日の朝も講堂での礼拝が終わり、順々に退場していましたが、私は友達に追い付こうと足早に廊下の曲がり角にある大きなガラス戸の前まで行った時、外にオレンジ色の光を見て足を止めました。次の瞬間、顔中を思い切り砂利玉でもぶつけられたような衝撃を受けました。「ワアー」と大声で叫びながら倒れましたが、ガラガラーと三階建ての木造の校舎が降るように崩れてきて、下敷きになりました。辺りは真っ暗闇となり、皆口々に叫び声を上げ騒然となりましたが、誰からともなく、「落ち着きましょう! 元気を出して頑張ろう」と声を掛け合いました。 そうしているうちに崩壊が終わり、埃が沈まってきたら、隙間から光が差してきて自分がどのような状態でいるかが分かりました。外に出られそうな大きな隙間も見え、体の動く人は脱出して、手を引っ張って脱出の手助けをしました。 私は大きな木材におさげ髪の片方がしっかり挟まれてなかなか抜けず、とても焦りました。ようやく抜けて外に出ましたが、そこに待機しておられた先生が「お前は目をやられたナ」とおっしゃいましたが、目