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概要

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115 同年代三人の方々の死が良い」とその場にいることを拒否されました。後日、その時の様子をお聞きする機会がありました時に、炎がNさんの全身を包んだ瞬間、彼女は合掌していた両手を振りほどいて、パッと上に開くように高く上げたそうです。きっと、何か訴えたいことがあったに違いありません。こうして、彼女は善意ある人たちの手によって荼毘に付されました。まだ十八歳の短い生涯でした。あまりに悲惨なNさんの最期を思う時、胸が締め付けられるような痛みを感じます。 何日かたって、海軍兵学校におられたNさんのお兄さまがご遺骨を引き取りに、H中尉の所へ来られることになった時、私がお預かりしていたバスケットを持参いたしました。中には当時の女学生たちが好んで集めていたかわいいマスコットのような物が数点と、私たちのグループ四人が、昭和十九年一月一日に写真屋さんで撮ってもらった写真が一枚入っていました。私は、今は妹さんの大切な遺品となったお品を、お兄さまにお渡しするのが、一番良いのではないかと思い、お願いして受け取っていただきました。 広島に入市した七日から九日までの三日間に、同年代の三人の方々の死を目の当たりにして、私は生かされた者の一人として、両親に看取られることもなく、一人寂しく旅立って逝かれた人々のことを、後世まで語りついで行かなくてはならないとの思いにかられ、ペンを取りました。こんな惨いことが、二度と繰り返されてはならないと、強く訴えたいと思います。 最後になりましたが、原爆でお亡くなりになりました方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。……七十八歳(旧姓福井)高女五十一回、広島市東区在住