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概要

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101 原爆体験記「ピカドン」いるのだ。白いシャツは光線を反射さすのか焼けていなかったが、色の付いた上着はみなボロボロに焼けていた。 又、建物の中にいた人は上半身裸の人が多かったのだろう。ガラスの破片か何かで身体中いたる所に切り傷があり、血だらけの体になっている。 避難した洞窟は大きく掘られており百人くらいは居ただろうか?、その中には息も絶え絶えに「水を下さーい 水を飲ませてー」と言いながら息絶える人、半狂乱状態で呻き声を上げている人、死んでいるのか生きているのか身動きせず横たわっている人、など生死の境を彷徨している人々が沢山いる。そんな洞窟の中で、勇気付けられたのは同級生もいた事だ。しかし中には顔が腫れ上がり名乗らないと全く判らない友も沢山いたし、肉親の名を呼びながら「痛いよー 痛いよー」と言って泣いていた者も相当いた。 そんな阿鼻叫喚の中で一人の兵隊が軍刀に手をやって「これ位の事で日本男児がめそめそするな! 今に薬が来るから我慢しろ」と大声で叱っていた。その内、油薬が届き応急処置が始まった。その時の兵隊は、「これからの銃後の日本を守るのは、若い者達だから学生から先に来い」と言って、優先的に薬を付けてくれた。白い油薬のお蔭で多少痛みも治まったが、無性に喉が渇く。水場の近くには死体が、折り重なっていた。誰もが渇きを癒した安堵感からか? その場で倒れてしまう者や、飲もうとしてたどり着きその場で力尽きた者が多く、「水を飲んだら死ぬぞ」と言う噂が流れた。昼過ぎまで洞窟に居たが、同じ三篠国民学校から共に広商に入学した西田稲造君と家に帰る事にし比治山橋まで出て見ると、未だ市中は火の海で何処を通って帰ろうかと話合っていた所に少佐?の肩章・襟章を付けた陸軍の将校に、「君達は何処へ帰るのか」と聞かれ、「横川まで帰ります」と答えると、「俺もその方面に行くから一緒に行こう」と言われ、少佐殿の後について京橋川の西側を下った。 途中南瓜が畑で黒焦げになっているのを見て「腹が減っているだろう、あの南瓜を食べるか」と言われ、初めて口の中が土埃りでザラザラになっているのに気